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柴田 崇統*; 浅野 博之; 池上 清*; 内藤 富士雄*; 南茂 今朝雄*; 小栗 英知; 大越 清紀; 神藤 勝啓; 高木 昭*; 上野 彰
AIP Conference Proceedings 1869, p.030017_1 - 030017_11, 2017/08
被引用回数:4 パーセンタイル:85.09(Physics, Applied)J-PARCでは2014年9月より、セシウム(Cs)添加型・マルチカスプ・高周波放電型(RF)負水素(H)イオン源の利用運転が開始され、電流値45mA、繰返し1.25%(0.5ms, 25Hz)のH-ビームを1000時間連続で引き出すことに成功している。本研究では、J-PARCイオン源内のRFプラズマに対する数値計算モデルを構築することで、プラズマの点火過程と定常状態におけるH生成・輸送に関わる物理過程を解明する。シミュレーションモデルでは、(1)荷電粒子(電子,水素陽イオン, Csイオン)、(2)イオン源内に形成される誘導性・容量性電磁場の時間変化、および(3)荷電粒子と水素原子・分子間の衝突過程を同時に計算する。また、同モデルを高エネルギー加速器研究機構並列計算機システムA(32ノード・256GBメモリ)に適用することで、10m以上の高密度となるRFプラズマの挙動を十分な統計性を以て計算することが可能である。発表では、RFプラズマの成長過程に重要なプラズマパラメータを、プラズマ温度・密度、および電磁場分布の時間発展とともに示す。
小島 有志; 梅田 尚孝; 花田 磨砂也; 吉田 雅史; 柏木 美恵子; 戸張 博之; 渡邊 和弘; 秋野 昇; 小又 将夫; 藻垣 和彦; et al.
Nuclear Fusion, 55(6), p.063006_1 - 063006_9, 2015/06
被引用回数:41 パーセンタイル:89.45(Physics, Fluids & Plasmas)原子力機構では、JT-60SAやITERで利用する中性粒子入射装置の開発に向けて、大型高エネルギー負イオン源による100秒を超える負イオン生成・加速の実証を目指した研究を進めている。まず、JT-60SA用負イオン源の負イオン生成部のプラズマ閉じ込め用磁石配置を変更することにより、生成されたプラズマの密度分布を一様化することに成功した。これにより、引出領域の83%から一様な負イオンビームを生成し、これまでの最高値17Aを大きく超える32Aの負イオン電流を1秒間引き出すことに成功した。この磁場配位とこれまでに開発した長時間負イオン生成用温度制御型プラズマ電極を適用し、さらに負イオン電流のフィードバック制御手法を用いることにより、15Aの大電流負イオンビームを100秒間維持することに成功した。これは、JT-60SAの定格の68%の電流に相当し、パルス幅は定格を満たしている。また、ITER用高エネルギー加速器の開発に向けては、負イオンビームが加速途中で電極に衝突して生じる熱負荷を低減するだけでなく、負イオンと同時に引き出される電子を熱的に除去することが重要であった。今回、冷却構造を改良することにより従来の5倍の電子熱負荷を許容できると共に、残留磁場で偏向する負イオンビームの軌道制御機構を組み合わせて、新しい引出部を開発した。その結果、700keV、100A/mの負イオンビームを従来の7倍以上長いパルス幅である60秒間維持することに成功した。
小島 有志; 花田 磨砂也; 吉田 雅史; 梅田 尚孝; 平塚 淳一; 柏木 美恵子; 戸張 博之; 渡邊 和弘; Grisham, L. R.*; NB加熱開発グループ
AIP Conference Proceedings 1655, p.060002_1 - 060002_10, 2015/04
被引用回数:6 パーセンタイル:87.25(Physics, Applied)JT-60SA用負イオン源に向けては、22Aの大電流負イオンを100秒間生成することが大きな課題である。負イオンを長時間効率よく生成するためには、これまでの研究の結果、セシウム原子層が形成されることで負イオン生成が促進されるプラズマ電極の温度を、200C程度の高温に維持する必要があることが分かっている。そこで、1気圧で高沸点を有するフッ素系冷媒をプラズマ電極内に循環させて温度を制御する手法を開発し、目標の電流密度(120-130A/m)を100秒間維持する原理実証に成功した。その結果を基に、全引出領域において電極温度を制御する実機プラズマ電極を製作し、試験を開始した。初期結果として、原理実証用電極と同様の制御時定数が得られ、プラズマ電極の全引出領域において、温度を一定に制御することに成功した。また、セシウムを導入して負イオン電流量を増大させ、現在までに70%の出力に相当する15Aの大電流負イオンビームを100秒間一定に生成することに成功している。
梅田 尚孝; 池田 佳隆; 花田 磨砂也; 井上 多加志; 河合 視己人; 椛澤 稔; 小又 将夫; 藻垣 和彦; 大賀 徳道
Review of Scientific Instruments, 77(3), p.03A529_1 - 03A529_3, 2006/03
被引用回数:6 パーセンタイル:34.02(Instruments & Instrumentation)JT-60NBI用の負イオン源では、大面積で一様に負イオンを生成するためにプラズマ電極に数kAの電流を流してフィルター磁場を形成している。この電流によって、イオン源加速部とその下流で負イオンビームと電子ビームの軌道が曲げられる。この負イオンビーム及び電子ビームの軌道を実験及び計算で評価した。3.5mの位置で負イオンの単一ビームを計測したところ、PGフィルター電流を1kA増加させると7mmビームが変位することが明らかになった。また、2004年の長パルスの実験で、イオン源から1mの位置のビームラインが一部が溶融したが、これは100keV以上のエネルギーの電子が偏向され熱負荷となったことが明らかになった。
小栗 英知; 上野 彰; 滑川 裕矢*; 池上 清*
Review of Scientific Instruments, 77(3, Part2), p.03A517_1 - 03A517_3, 2006/03
被引用回数:5 パーセンタイル:29.76(Instruments & Instrumentation)原研では2001年より高エネルギー加速器研究機構と共同で大強度陽子加速器計画(J-PARC)を開始している。J-PARCの第1期では、リニアックにてビーム電流30mA,デューティーファクタ1.25%の負水素イオンを加速する。LaB6フィラメントを使用したJ-PARC用負イオン源は、セシウム未添加状態にて定常的にビーム電流35mA以上,デューティーファクタ0.9%のビーム供給を行っている。デューティーファクタはJ-PARC要求値の1/3であるが、LaB6フィラメントの交換頻度は半年に1回程度である。一方、J-PARCにおいてセシウム添加状態にて72mAのビームを発生できる負イオン源を使用し、タングステンフィラメントの寿命測定を実施した。その結果、J-PARCの目標である500時間連続運転を達成できる見込みを得ることができ、タングステンフィラメントを使用したセシウム未添加型負水素イオン源もJ-PARC用イオン源の候補になり得ることがわかった。現在、セシウム未添加型タングステンフィラメント負水素イオン源のビーム試験を実施しており、本会議ではその結果について報告する。
梅田 尚孝; 山本 巧; 花田 磨砂也; Grisham, L. R.*; 河合 視己人; 大賀 徳道; 秋野 昇; 井上 多加志; 椛澤 稔; 菊池 勝美*; et al.
Fusion Engineering and Design, 74(1-4), p.385 - 390, 2005/11
被引用回数:9 パーセンタイル:53.19(Nuclear Science & Technology)JT-60U用負イオン中性粒子入射装置において、パルス幅を設計の10秒から30秒に伸ばす改造が行われた。パルス幅の延伸を妨げていたのは、イオン源接地電極とビームラインリミタへの過大な熱負荷であった。熱負荷を下げるために、イオン源のビーム引出領域を長パルス化に最適化するとともに、ビームリミタを熱容量が約2倍のものに変更した。これらにより、接地電極を冷却している水温上昇を定常運転に必要な40C以下に抑えることができ、リミタの温度上昇も60%に抑えた。これにより、パルス幅を伸ばすことができ、これまでエネルギー336keV,パワー1.6MWで17秒間のビームをプラズマに入射することができており、今後30秒まで入射パルスを伸ばす予定である。
岡野 邦彦*; 鈴木 隆博; 梅田 尚孝; 日渡 良爾*; 正木 圭; 飛田 健次; 藤田 隆明
プラズマ・核融合学会誌, 81(8), p.579 - 580, 2005/08
トロイダル系では中性粒子ビーム入射により生成されトーラスを循環する高速イオンが中性粒子ビーム自身の停止断面積に影響を与える。この効果は主著者(岡野)により初めて提案され「ビーム粒子自己相互作用(BPSI)」と名付けられた。最近のJT-60Uにおける350keV軽水素原子ビーム入射実験によって、世界で初めてこのBPSI効果を同定した。電子密度110m程度の低密度放電においてビームの突き抜けはビーム入射開始後数100ms以内に35%減少した。この結果はBPSI理論による予言と一致する。
篠原 孝司; 石川 正男; 武智 学; 草間 義紀; 藤堂 泰*; Gorelenkov, N. N.*; Cheng, C. Z.*; 福山 淳*; Kramer, G.*; Nazikian, R. M.*; et al.
プラズマ・核融合学会誌, 81(7), p.547 - 552, 2005/07
負イオン源中性粒子ビームを用いて高速イオンの圧力の高い状態を作るとアルベン固有周波数帯にバースト状で数十ミリ秒以下の時間スケールの周波数掃引を伴った不安定性(Fast FSやALEと呼んでいる)が観測された。これらの不安定性により高速イオンの輸送が助長されていることが明らかになった。最近、自然組成ダイヤモンド検出器を用いた中性粒子束分布計測により、輸送高速イオンの共鳴的エネルギー依存性が明確に観測された。結果は輸送が、高速イオンと不安定性とが共鳴的に相互作用し、不安定性の電磁場を静的に感じて起きていることを示唆している。また、Fast FSの周波数掃引についても、粒子-MHD混成数値計算コードにより、最近、実験結果を再現する結果を得ており、波動による粒子捕捉領域の軌道周回周波数が変化することによって生じる現象であると考えられる。このような非線形現象について高速イオン圧力分布との関連について報告する。さらに、負磁気シア誘導アルベン固有モード(Reversed Shear-induced AE; RSAE)の発生をTASK/WMコードにより理論的に予測していたが、MSEによる詳細なq分布計測等を用いてJT-60においてこれを同定した。NOVA-Kコードを用いて、RSAEの安定性解析を行い、実験と数値計算の比較を報告する。
草間 義紀; 石川 正男; 武智 学; 西谷 健夫; 森岡 篤彦; 笹尾 真実子*; 磯部 光孝*; Krasilnikov, A.*; Kaschuck, Y.*
Proceedings of Plasma Science Symposium 2005/22nd Symposium on Plasma Processing (PSS-2005/SPP-22), p.395 - 396, 2005/00
JT-60の重水素放電による中性子/線発生環境下において、天然ダイアモンド検出器を用いた高エネルギー中性粒子の測定に成功した。中性子及び線のノイズを低減するため、ダイアモンド検出器をポリエチレンと鉛で覆った。そのシールドは期待通りの性能を示した。負イオン源中性粒子ビーム入射(NNBI)で生成される高エネルギーイオンによってトロイダル・アルヴェン固有モード(TAE)が励起された際に、高エネルギーイオンの輸送を示唆する中性粒子束の急激な上昇を観測した。中性粒子の上昇が観測されたエネルギー範囲は、高エネルギーイオンとTAEとの共鳴的な相互作用で予測されるエネルギー範囲と一致した。
山本 巧; 大賀 徳道; 河合 視己人; 秋野 昇; 椛澤 稔; 梅田 尚孝
平成16年電気学会全国大会講演論文集, 219 Pages, 2004/00
原研では、1996年に臨界プラズマ試験装置(JT-60)の高密度プラズマ領域における加熱・電流駆動の開発研究を目的として、10MW, 10秒の500keV負イオン源中性粒子ビーム入射(N-NBI)装置を建設し、JT-60プラズマへのビーム入射実験の運転をしつつ、装置性能改善を行ってきた。現在までに最大418keV、入射パワー6.2MWの水素ビームの入射を達成し、入射パルス幅については、一台のイオン源で2.6MWで10秒の入射に成功している。しかし、未だに設計上の性能値に達していないため、さらなる改良試験を行っている。性能を制限している主な原因は、イオン源加速部の耐電圧と電極の熱負荷である。現在、イオン源の電極構造を改良して、耐電圧の向上と電極熱負荷の低減を図った。その結果、性能の拡大が得られている。
梅田 尚孝; Grisham, L. R.*; 山本 巧; 栗山 正明; 河合 視己人; 大賀 徳道; 藻垣 和彦; 秋野 昇; 山崎 晴幸*; 薄井 勝富; et al.
Nuclear Fusion, 43(7), p.522 - 526, 2003/07
被引用回数:39 パーセンタイル:74.23(Physics, Fluids & Plasmas)JT-60用負イオンNBIはプラズマ加熱と電流駆動を目的として設計され1996年より運転を行っている。目標性能はビームエネルギー500keV,入射パワー10MW,パルス幅10秒の中性粒子ビームをプラズマに入射することである。今まで、パルス幅はポートリミタの過大な熱負荷のために5.3秒に制限されていた。3.5mの位置での負イオンビームの分布を計測することによって、電極セグメント端部のビームが外側へ偏向していることが明らかになった。引出部下流における凹みによる電界の不整が原因であった。これを改善することによって、端部のビームの偏向を14mradから4mradまで減少させた。この結果、定格の10秒入射をビームエネルギー355keV,入射パワー2.6MWで達成した。
福田 武司; JT-60チーム
Plasma Physics and Controlled Fusion, 44(12B), p.B39 - B52, 2002/12
被引用回数:7 パーセンタイル:24.31(Physics, Fluids & Plasmas)ITERの先進定常運転で高い予測性能を実現するため、JT-60における最近の実験では高い閉じ込め性能と定常運転に対して優れた適合性を示す内部輸送障壁の研究を重点的に進めてきた。負磁気シア放電では電子サイクロトロン波電流駆動と蓄積エネルギーの実時間帰還制御(自発電流分布の制御につながる)を組合せてDT換算で約0.8のエネルギー増倍率を0.55秒間維持することに成功した。一方、高プラズマ電流の領域におけるプラズマ断面の三角形度を従来より高くすることにより、高密度領域における閉じ込め性能を顕著に改善するとともに、弱磁気シア放電で規格化値2.5を7秒間維持した。また、最高5.7MWの負イオン源中性粒子加熱装置を用いて1.8MAの非誘導電流駆動に成功した。その他、内部輸送障壁を有する高性能プラズマにおける不純物の輸送,外部摂動を利用した内部輸送障壁の制御性について述べる。
篠原 孝司; 武智 学; 石川 正男*; 草間 義紀; 森岡 篤彦; 大山 直幸; 飛田 健次; 小関 隆久; JT-60チーム; Gorelenkov, N. N.*; et al.
Nuclear Fusion, 42(8), p.942 - 948, 2002/08
被引用回数:43 パーセンタイル:77.34(Physics, Fluids & Plasmas)核燃焼プラズマでは、粒子圧力が高くなると、アルヴェン固有モード(AE)周波数領域の不安定性により粒子の閉じ込めが劣化することが危惧されている。JT-60Uでは、負イオン源中性粒子ビーム(N-NB)入射により高速イオンを生成して、バースト的に発生する周波数掃引不安定性の研究を行っている。最近の解析により、バースト的な周波数掃引現象が、不安定性と高速イオン分布関数の変化と背景プラズマの散逸との非線形な相互作用に起因していると考えられるという結果を得た。また、新たに設置した中性子分布計測により不安定性により高速イオンが再分布していることを示唆しているデータを得た。
下岡 隆; 小栗 英知; 滑川 裕矢*; 富澤 哲男; 奥村 義和; 長谷川 和男
JAERI-Tech 2002-038, 30 Pages, 2002/03
日本原子力研究所と高エネルギー加速器研究機構が共同で推進する大強度陽子加速器計画では、核破砕反応によって発生する二次粒子を用いて多様な分野の研究を展開するため、既存の加速器を大幅に上回るビーム出力1MWという性能を目指している。これに必要なビームを生成するイオン源には、ビーム電流60mA、デューティー2.5%以上が必要とされる。また、シンクロトロンへの入射効率を上げるため、ビームの種類は負水素イオンが必須となる。原研では、核融合炉で使用する大型負イオン源開発で培われた技術をベースに大強度陽子加速器用体積生成型負イオン源の設計・製作を行い、ビーム試験を進めてきた。その結果、セシウム添加状態において負イオンビーム電流72 mA、規格化RMSエミッタンス0.15mm.mrad の負イオンビーム引き出しに成功した。また、運転ガス流量がパルスビーム電流波形に大きく影響し、16SCCM程度で良好なパルス平坦度が得られることがわかった。これらの開発により要求性能を充分満たすイオン源を実現した。
小栗 英知; 奥村 義和; 長谷川 和男; 滑川 裕矢*; 下岡 隆*
Review of Scientific Instruments, 73(2), p.1021 - 1023, 2002/02
被引用回数:17 パーセンタイル:64.52(Instruments & Instrumentation)原研では素粒子原子核研究、物質生命科学研究及び核変換技術開発を目的としたビームパワー1MWの大強度陽子加速器施設の建設を計画している。本計画で使用する負イオン源では、ビーム強度60mA以上、規格化エミッタンス0.15pimm.mradのビーム引出が要求されている。そのため体積生成型負イオン源を設計・製作し、目標達成に必要な実験データの収集を行った。イオン源のソースプラズマはタングステンフィラメントを用いたアーク放電にて生成する。ビーム強度を上げるために、アークチェンバー中にセシウム蒸気を導入する。ビーム引き出し系は3枚の電極で構成され、ビーム孔の寸法は8mmである。今までのところ、ビームエネルギー70keV、デューティー5%の条件下でアーク放電電力30kWに対しビーム電流40mAのビーム引き出しに成功している。セシウムを導入するとビーム強度はアーク放電電力に比例して増加することが分かったので、今後、さらに大出力のアーク電源を用いてビーム試験を行う予定である。
森下 卓俊; 宮本 賢治*; 藤原 幸雄*; 花田 磨砂也; 北川 禎*; 柏木 美恵子; 奥村 義和; 渡邊 和弘
Review of Scientific Instruments, 73(2), p.1064 - 1066, 2002/02
被引用回数:2 パーセンタイル:18.93(Instruments & Instrumentation)大電流負イオン源開発において、大面積から均質の負イオンビームを引き出すことは、静電加速電極の熱負荷軽減のために重要である。そこで、プラズマ密度の空間分布と負イオンビームの一様性との相関を調べた。その結果、プラズマ電極近傍において、イオン飽和電流に強い非一様性が見られた。負イオンビーム電流の空間的非一様性はプラズマ密度の分布と同傾向を示した。このプラズマ密度の不均一性は、プラズマ電極に印加するバイアス電圧に依存することから、フィルター磁場とバイアス電圧印加によるEBドリフトによると考えられる。次に、イオン源内にセシウム(Cs)を添加すると、プラズマ密度の分布は純粋水素放電と同様であるが、一様性の良い負イオンビームが得られた。負イオンビーム分布がプラズマ密度分布の非一様性に依存しないことから、中性の水素原子による負イオン表面生成が最も負イオン生成に寄与していることがわかった。
森下 卓俊; 柏木 美恵子; 奥村 義和; 渡邊 和弘; 花田 磨砂也; 井上 多加志; 今井 剛
第12回粒子線の先端的応用技術に関するシンポジウム(BEAMS 2001)報文集, p.33 - 36, 2001/11
大電流負イオンビームの生成は中性粒子(NB)入射装置の高効率化に向けて重要である。負イオンビームの静電加速段階では、残留中性粒子との衝突による負イオンの損失が高効率化の妨げとなるため、イオン源の運転ガス圧を低く抑える必要がある。また、イオン源にセシウム(Cs)を添加することで、負イオン生成が促進されることがわかっている。Cs添加イオン源では、低ガス圧下においてもイオン源内で高密度のプラズマの生成が必要であるため、イオンの閉じ込め効率の高いカマボコ型イオン源にCsを添加し、低ガス圧での大電流負イオンビーム生成実験を行った。生成された負イオンは電子との衝突反応により消滅するが、その反応断面積が電子温度に強く依存する。低ガス圧での放電では、負イオン生成領域の電子温度が高くなる傾向があるため、電子温度を負イオン生成に適した1eV程度まで下げる必要がある。そこで、電子温度を下げる働きをもつ磁気フィルターの強度を調節し、負イオン生成の最適化を行った。その結果、ガス圧0.1Pa,アーク放電パワー80kWにおいて、31mA/cm,49keVの負イオンビーム生成に成功した。
柏木 美恵子; 雨宮 亨*; 伊賀 尚*; 井上 多加志; 今井 剛; 奥村 義和; 高柳 智弘; 花田 磨砂也; 藤原 幸雄; 森下 卓俊; et al.
第12回粒子線の先端的応用技術に関するシンポジウム(BEAMS 2001)報文集, p.37 - 40, 2001/11
核融合プラズマの燃焼,電流駆動に不可欠な中性粒子入射装置(NBI)における負イオン源では、電流の高密度化,長パルス化が重要な開発項目である。日本原子力研究所ではセシウム添加型高密度負イオン源を開発し、仏国・カダラッシュ研究所との共同実験にて負イオンビーム長パルス加速実験を行った。この目的は、ITER-NBIに要求されている高密度負イオン電流(重水素で20mA/cm,水素負イオンで28mA/cm)の1000秒間加速を実証することである。セシウム効果を十分に得るため、フィルター磁場を最適化し、プラズマ電極温度を一定に保つことが可能な強制冷却型プラズマ電極を用いた。その結果、高密度水素負イオン電流30mA/cm(80秒間)を得た。また水素負イオン18mA/cm、重水素負イオン12mA/cmで1000秒間の連続加速を達成した。
河野 康則; 草間 義紀
原子力eye, 47(11), p.29 - 33, 2001/11
太陽を含め宇宙に存在する恒星の輝きが核融合反応で発生したエネルギーによるものであることは良く知られており、同様の核融合反応をもとにしたエネルギー源を地上で実現するための研究開発が進められてきた。この中で、日本原子力研究所の臨界プラズマ試験装置JT-60は、世界の核融合研究をリードする多くの研究成果を挙げ、国際熱核融合実験炉(ITER)計画の推進に大きく貢献している。本稿では、これまでの核融合研究の流れを概観するとともに、ITERの定常運転の実現性を高めたJT-60の最近の成果について紹介する。
渡邊 和弘
電気学会誌, 121(6), p.384 - 386, 2001/06
未来のエネルギー源として期待される核融合技術と真空について解説する。プラズマを用いて核融合を実現するためには、その密度、温度、閉じ込め時間の三つが重要であるが、そのどれにも装置内の真空の質が大きく関わっている。また、プラズマ加熱に用いられる中性粒子を発生させるための負イオン源においても、真空中でのMeV級の直流絶縁技術が必要である。原研の臨界プラズマ試験装置JT-60では真空の質を改善してプラズマの性能を高めるために、第一壁面の材質の選択によりプラズマに混入する元素を制御している。影響の少ないできるだけ軽い元素とするためグラファイトが用いられ、かつボロン膜コーティングが施されている。さらに、プラズマ中の不純物を積極的に外部に取り出すダイバータと呼ばれる装置や磁場配位の改良によって1998年には核融合エネルギー増倍率1.25の世界最高性能を実現した。また、プラズマの加熱や定常維持に有効な1MeV級の高エネルギー中性粒子入射装置用の負イオン源の開発が行われている。負イオン加速管では耐電圧を高めるために絶縁体と金属部接合部の電界緩和や絶縁体表面のビームからの遮蔽などが適用され、さらに真空圧力の調整等によって1MeV級の負イオン加速が可能になった。本論文ではこれらについて解説する。